これまで住宅ローンというと、65歳の定年に合わせて借入して退職金で一括返済するのが価値観としてありました。それが2024年現在ですと35年から15年も延長した50年の住宅ローンも登場してきました。
住宅ローンは借入なので借金として捉えて早く返すべきと考える方も多くいらっしゃるでしょう。とはいえ、実際に35年と50年とシミュレーションをしてみるとメリット面も多々あるため悩まれる方も多いかと思います。今回は、住宅ローンで50年のメリットと注意点を解説していきます。
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目次
住宅ローンの最長は50年!メリットは複数ある
これまで住宅ローンの借り入れをする場合、最長は35年でした。それが50年まで借り入れできるようになっています。50年と途方もない期間ですが、借入することのメリットも複数あります。
・返済を抑えられる
・借入できる金額を大きくできる可能性がある
・団体信用生命保険の期間も長くなる
具体的に見ていきましょう
50年ローンは返済を抑えられる
住宅ローンの期間を50年にする最も大きいメリットになります。以下の通りシミュレーションをしてみましょう。
例:借入金額5,000万円、金利0.5%で想定(金利変動は簡便化のため考慮しておりません。)
・期間35年の場合:毎月返済額129,792円、総利息額4,512,740円
・期間50年の場合:毎月返済額94,200円、総利息額6,520,232円
何と同じ借り入れなのに、毎月の返済額は約3.5万円も返済額が下がります。 毎月の住居費が出費の中でも1/3以上占める方もいらっしゃるはずですので月々返済額を抑えられるのは大きな魅力になります。
借入できる金額を大きくできる可能性がある
住宅ローンを借り入れする際に所定の審査があります。その中の一つに、返済比率という見方があります。返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合を指します。具体的な計算方法は、年間の返済額を年収で割って100をかけてることで求められます。審査に通りやすい目安は35%以内になっていることです。また、金利は審査用に3~4%と高めにしておりそれでもって範囲内になっているかを確認されます。
・例:年収500万円、年間返済額が150万円の場合、150万円/500万円*100=30%
注意点としては、ここの返済額には住宅ローン以外の返済がある方はその分も加算する必要があります。例えば、カードローン、カーローン、奨学金なども含まれます。不動産投資をされている場合は、その返済も考慮されますがキャッシュフローが黒字かどうかによっても変わるため金融機関に確認しましょう。
また、年収というのは会社員の場合に限ります。個人事業主やフリーランスの場合は所得3期分の平均を確認されるため、売上500万円、経費400万円で所得を100万円にしていると年収は100万円になるため注意しましょう。
先ほど返済比率の目安は35%以内と記載しましたが、期間を長くすることによって比率を緩めることに繋がります。結果として、もともと最大5,000万円まで借入出来た方が6,000万円まで増やせる等枠が広がる余地があります。都内の物件は非常に高止まりしているため、枠が広がることで購入できる物件の幅を広げられます。
団体信用生命保険の期間も長くなる
住宅ローンを借り入れすると、団体信用生命保険(団信)に加入します。団信とは、住宅ローンの返済中に契約した本人が亡くなったり、高度障害状態となる状況に見舞われたりすると、残高が0円になる保険が団信です。
記載したような団信を一般団信と呼び、全員が基本的には加入する必要があります。(フラット35等一部不要の商品もあります。)その他、金利を上乗せすることでがんに罹患すると残高が0円になるような追加する団信のことを特殊団信と呼ぶことが多いです。
このように、一般団信、特殊団信ともども加入は住宅ローンを借り入れするタイミングになるため期間を長くするとそれだけ保険期間も長くすることができます。
住宅ローンを50年にすることのデメリットと注意点
住宅ローンを50年にすることにデメリットもあります。
・35年などに比べると総利息が多くなる
・残高の減りが遅い
・全員が50年の期間を借入できない
具体的に見ていきましょう。
35年などに比べると総利息額が多くなる
毎月返済額絵確認した例を元にどの程度総利息額が増えるか確認していきましょう。
例:借入金額5,000万円、金利0.5%で想定(金利変動は簡便化のため考慮しておりません。)
・期間35年の場合:毎月返済額129,792円、総利息額4,512,740円
・期間50年の場合:毎月返済額94,200円、総利息額6,520,232円
その差約200万円となります。15年長く借入したことによって今回の事例ですと200万円の利息増加になりますが、これを多いと思う方もいらっしゃるとは思います。
残高の減りが遅い(35年ローンと50年ローンの残高をシミュレーション)
個人的にはここのデメリットが一番大きいと思っております。期間35年と50年で借入した場合のそれぞれの期間での残高を見てみましょう。
5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 | |
期間35年 | 43,381,443円 | 36,595,372円 | 29,637,544円 | 22,503,621円 |
期間50年 | 45,543,421円 | 40,974,049円 | 36,289,029円 | 31,485,432円 |
差額 | 2,161,978円 | 4,378,677円 | 6,651,485円 | 8,981,811円 |
ご覧のように同じ期間を返済していても残高では大きな差が出てきます。とはいえ、50年ローンですと毎月約3.5万円、1年間で約42万円返済が浮いています。5年で210万円、10年で420万円、15年で630万円、20年で840万円分手元にお金は残せています。こちらをうまく活用できるかはその家計次第ですので、返済を浮かせても無駄使いしてしまうようでしたら35年でしっかり返すのも一つでしょう。
また、返済に応じて残高の減りも期間が35年のように短いものよりは遅いためそれ以上で売れるのかどうかは常に市況を確認して把握しておく方が無難です。
なお、50年借入した方と言って必ず50年借りないといけない訳ではないです。つまり、前もって繰り上げ返済をして期間を短くすることもできるということです。借りて良いという権利になりますので、状況に応じて返済額を増やすなど検討していきましょう。ちなみに、今のように金利が非常に低いままであれば借りておく方がよく、金利が上がったとしても慌てずに判断したいものです。
全員が50年の期間を借入できない
期間50年の住宅ローンは完済時年齢79歳以下で区切られることが大半です。つまり、29歳以下でないと50年という最長の住宅ローンを使うことはできないということです。
そのため、長い期間を借入して毎月の返済額を浮かせたい方は1年でも若い年齢で住宅ローンを借り入れするようにしましょう。
50年の住宅ローンがおすすめできる方とおすすめできない方
メリット、デメリットを確認していただいた上で、50年の住宅ローンをおすすめできる方、おすすめできない方をまとめました。
おすすめできる方 | ・家計管理が得意な方 ・一定の不動産知識がある方 |
おすすめできない方 | ・家計管理が苦手な方 ・不動産知識が乏しい方 |
第一に家計管理が得意でないと使わない方が良いでしょう。具体的には、貯蓄ができない方です。貯蓄が0金利で無駄であることは置いておいて、積立投資でも良いのですが要するに貯めることができるということです。
また、不動産知識も一定必要だと思います。資産価値が下がりにくい物件を選ぶようにしておかないと残高の減りが遅い分売却時に損をする可能性があります。その際に、毎月浮いている分を無駄使いして貯蓄がないと損を出すにも売れなくなったりと今後のライフプランにも影響を与えかねません。
そのため、全員におすすめできるというよりはその家計に沿った形でお選びいただくのが良いでしょう。
50年の住宅ローンを提供している金融機関はどこはある?
50年の住宅ローンを提供している金融機関は地方銀行を中心にいくつかあります。例えば、宮崎銀行、西日本シティ銀行、京葉銀行などの地方銀行から、住信SBIネット銀行、楽天銀行などのネット銀行も提供しています。
ネット銀行は店舗がなく必然的に人件費を抑えられる分金利の競争に優位性をもっておりましたが、この50年ローンが出てからは地方銀行が台頭してきております。各地に支店があり、行員の方もいらっしゃるためお客様一人一人の状況をネット銀行以上に審査できる強みを活かしているのかなと推察しております。
いずれにしてもいくつか50年ローンを提供できる銀行はあるため、ニーズに沿って使うようにしましょう。
50年の住宅ローンも使えるなら良い選択肢
今回は、住宅ローンで50年のメリットと注意点を解説していきました。メリットは返済額を抑えられ、借入できる金額を広げられる可能性があり、団信の期間も伸ばせること。一方でデメリットは、総利息が増える、残高の減りが遅く、そして全員が使えるわけではないことでした。
家計管理もきちんとしておくことが大前提にもありますが、とりあえず長く借入するのはちょっと、、、と毛嫌いするのではなく選択肢として持ちつつ検討すると良いでしょう。
今回の記事が手付金や頭金に関して少しでも参考になれば幸いです。ありがとうございました。